2020年4月29日水曜日

在野研究2年生の雑感

私が駒澤大学を卒業し、就職して在野研究の世界に足を踏み入れてから1年と1カ月経った。
在野研究家としてはまだまだひよっこではあるがこの一年間に感じたことなどを記録しておこうと思う。なお、半分くらいはただの愚痴である。


始める前からわかっていたことだが在野研究とはなんとも難しいものである。

まず、時間がなかなか取れない。
1日8時間労働で残業しなければ時間自体はあるのだがHP回復に時間がかかる。その上家事などをしていると驚くほど時間が早く過ぎていき、気が付けばあすの仕事のために寝る時間となっている。
繁忙期に入ってからは残業と休日出勤は当たり前になり家事すらろくにできなくなったためもはや研究という状態ではなくなった。

次に情報収集が難しい。
研究するには先行研究等様々な情報が必要だが、それらの情報源として非常に有能な大学図書館を失った影響は計り知れない。
家のそばに尼崎市立図書館あるけどあんまり充実していないので役に立たないことが多い。

モチベーションの維持ができない。
在野研究とは孤独なもので、大学のように周囲に同じく研究を行っている人はまずいない。さらに特に締め切りや義務があるわけでもないためいつまでたってもやりたくなければやらなくていいのである。

最後に発表機会がない。
在野の場合は学会等最終的なものを発表するような場しか発表機会がなく、学生のゼミでの中間発表や各授業のレポートなど発のような中間的な発表機会は非常に限られる。


以上4つを挙げたが、このうち前2つの解決は困難である。しかし、後2つについてはある程度解決することができるのではないかと。
要は在野研究グループの設立だ、幸いにして下国会議という先例もあるためこの方法である程度の解決を見込むことができるであろう。
在野研究グループに期待したい機能は
・在野研究者同士の交流の場
・研究成果発表の場(口頭発表・レポート等)
この2つによってモチベーションの維持と発表機会の確保をすることができたらと思う。

一応これについては既に動き始めている。友人に協力してもらって少しづつ形にするつもりだ。


なお、余談ではあるがこの記事を書き始めたのは私が在野に出てからちょうど1年の4月1日である。しかしなんだかんだと1カ月かかってしまった。かくも在野研究とは腰が重いものなのである。




2019年11月13日水曜日

淡路島の里程元標(速報版)

里程元標とは道路元標の一種で、一般的に明治期に建てられた角柱のものをさす。
里程元標は木で作られることが多かったため基本的には現存しないが、兵庫県は石造で作られたものが多かったため、現在まで残存している例が多くある。

特に淡路島内には残存例が多く、現在確認できているだけで5件残存している。

先日、11月10日に現地調査を行い、残存5件を確認したのでこれを速報的に報告する。

尚、この調査結果は10月21、22日に行った道路元標調査と併せてまとめて某所で報告したいと思っているので詳細はそれまでお待ちいただきたい。

 仮屋里程元標:仮屋漁協前


 下内膳里程元標:上内膳八幡神社付近


 広田里程元標:広田南交差点


 由良里程元標:洲本消防署由良支所前


洲本里程元標:厳島神社大鳥居脇




2019年10月14日月曜日

"天井川"の用語混乱についての一考察~新語編~


先日のブログ記事「"天井川"の用語混乱についての一考察」ではひとまず地理学は土木・防災での定義を受け入れるべき、という結論であったが、土木・防災の側が譲って何か新語を作るべきではないかという考え方もあります。
今回はそんなことを考えていきたいと思います。

なお、前回は論文調でしたが、今回は内容的に論文調が合わないのでざっくばらんなブログ調でいきます。



川の形態を上記の3つに分類した場合、真ん中の「天井川?」をどう呼ぶかという話であるが、現状ではまとめて天井川と呼ばれている。
しかし、学術用語と民間の用語で意味に多少の差があることは別に珍しいことではないとはいえ、同じ語を違う意味で用いるのはなるべく避けるべきである。

さて、では天井川の代わりになんと呼んだらいいだろうか。
Twitterで募集した結果の中から私が気に入ったものを紹介します。

ハルレヤ。さん:堤防川
Koaraさん:恒常高水位川
毎日がエブリデイさん:築堤河川
川西まどかさん:準天井川
川西まどかさん:水面天井川

完全にただの私の趣味になってしまいますが、ハレルヤ。さんの堤防川が一番適切かなと思います。
理由としてはこのように変化する河川も内包できるからです。
”天井川”の定義を水面にした場合の最大の問題はいつの水面かです。降雨によっても影響しますし、農業(主に稲作)の影響も大きいです。ですので水面を基準にした場合、語の意味するところは厳密に定義すると”川の水面が周囲の地面より高い状態”を指すことになると考えられます。そうなった時に水面の高さの変化に対応できる語というと堤防川が適当なのではないかなと思います。











2019年10月7日月曜日

”天井川”の用語混乱についての一考察

”天井川”の用語混乱についての一考察


1.天井川とは

天井川とは「堤防内に多量の土砂が堆積し、川床が付近の平野面より高くなった川。」(デジタル大辞林 電子辞書版)などと定義される人口の河川地形である(図1)。

図1 天井川模式図

しかし、水面は周囲の平野面より高いものの、河床は周囲の平野面よりも低いもの(図2)を天井川とする”誤用”がなされることがしばしばある。

図2 天井川の"誤用"模式図

本稿ではそういった”誤用”を紹介しつつ、果たして"誤用"と断じてよいものかどうかを考察する。

2.天井川の"誤用"例

国土地理院が発行する土地条件図の初期整備版では天井川の定義として"誤用"も含むものになっている。

「天井川の部分は堤防によって囲まれ、河床または水面が堤内地より高い部分で、出水時に破堤が起れば、その周囲は極めて危険である」
建設省国土地理院(1985)『土地条件調査報告書(琵琶湖地区)』P25


「天井川:河床または水面が周囲の土地よりも高くなっている河川。出水すると、周囲の土地は著しい水害をうける可能性がある。」
国土地理院(2000)『土地条件図「和歌山」解説面』P3

ただし、これは2000年までで、2001年以降に整備されたものは以下のようになっている。

「天井川沿いの微高地:人工的に流路が固定された河川では、その後も旺盛な堆積作用の結果、河床が堤内地よりも高くなることがある。このような河川の堤防に沿って形成された半人工的な高まり」
国土地理院(2001)『土地条件図「岸和田」解説面』P2

しかし、2000年以前に整備された土地条件図の多くは廃刊になることなく今も現役であるため、"誤用"は流通し続けていると考えられる。


また、その他省庁や地方自治体でもこういった”誤用”は見られる。

大阪府高槻市
「高槻市の地形は、名神高速道路より南側は、平野部に市街地が広がっています。市内平野部を流れる河川は天井川(住んでいる場所よりも水面のほうが高い河川)となっているところもあり、水害の危険性が高くなっています。」
高槻市 都市創造部 下水河川企画課(2017)『高槻市水害・土砂災害ハザードマップ』P4


国土交通省九州地方整備局 筑後川河川事務所HP
「4.城原川の河川特性
城原川は、背振山地に降った雨を有明海まで流す「雨どい」の役割を持っているほか、水面が周辺の宅地より高い「天井川」などの様々な特徴を持っています。」
国土交通省九州地方整備局 筑後川河川事務所 城原川の現状と課題(http://www.qsr.mlit.go.jp/chikugo/gaiyou/jobarudam/jobarudam/03damu.html)2019年10月16日閲覧


他にも事例は多くある
出典:粟津清蔵 監修、国澤正和、西田秀行、福山和夫 著(2018)
『絵とき水理学 改定4版』P4

この絵ときシリーズは土木業界の入門書として広く知られているものであるが、そのうちの1冊である絵とき水理学では明らかに”誤用”の図が掲載されている。


ケーブルテレビ、イッツコムの放送コーナー「防災インタビュー」は放送後に内容がネット公開されている。そのうちのVol.69では元江戸川区土木部長の土屋信行氏のインタビューではこう紹介されている。
住んでいる所よりも川の水面のほうが高くなる現象を「天井川」といいますが、そのような状態になってしまったので、ここに大きな水が来るとすぐにあふれてしまいます。」
イッツコム 安心安全情報 防災インタビューVol.69 水害を防ぐために~先人の教えに目を向けて~(https://www.itscom.co.jp/safety/interview/276/)2019年10月16日閲覧


またインターネットサイトではあるが、「みんなで作る土木用語辞典」という辞典サイトにはこうある。
「天井川とは 上流から流れ出る土砂のため、川底が周辺の土地より高くなっている河川。低水位が地盤沈下などで周辺地盤より高い場合も便宜上呼ぶ場合がある。」
みんなで作る土木用語辞典(https://doboku.ezwords.net/yougo/%E5%A4%A9%E4%BA%95%E5%B7%9D.html)2019年10月16日閲覧


3.考察
以上7例と少ないが”誤用”事例を取り上げた。いずれも公的な組織や信頼におけると考えられる出典ではあるが公然と”誤用”を紹介してしまっている。しかしそれぞれの組織や媒体などを見ると傾向があるのがわかる。最初の国土地理院の事例を別にすると残りの5例は皆土木系なのである。

ではなぜ土木では”誤用”が用いられるのか。それは土木は人との関係を重視しているからだと考えられる。つまり、防災という観点の上では重要なのは河床ではなく水面の高さなのではないか。
堤防が決壊したときに一気に周囲の地面に流れ出し、大きな被害が起きる川というのは河床の位置に関係なく水面が周囲の地面より高い場合である。もし、河床が周囲の地面より低いからといって河床も水面も周囲の土地より低い河川と同じ扱いにした場合は大変なことになる。つまり、災害時のことを考えると分類の境界は河床ではなく水面である方が合理的なのである。
ただし、氾濫後の復旧は河床が周囲の土地より高いか低いかが重要になってくる。河床が周囲の地面より低い場合は堤防の修理をせずともある程度の水量は川に流れていくが、河床が周囲の水面より高い場合は堤防を直したうえでポンプアップしないと水は流れないのだ。

”誤用”事例の中で一番最後に紹介した『みんなで作る土木用語辞典』では「便宜上呼ぶ場合がある。」として”誤用”を紹介している。土木では本来の用語では間違っていると了解したうえで自分たちの目的に即した形に意味合いを意図的に広げて用いているのではないだろうか。

なお、国土地理院の2つの事例については土地条件図が比較的土木的な要素が強い地図だからではないかと予想されるがはっきりとしたことはわからなかった。

4.まとめ
所詮”誤用”は誤用ではあるが、地理学での本来の定義のほうが地形の分類という点で合理的なのであって、防災上のことを考えていないというのもまた事実である。
同じ用語を業界ごとに別々の意味で用いるというのは本来なら忌むべきではあるが、かといって土木の解釈を完全に誤りとして頭ごなしに否定するのは「地理学は役に立たない」といわれるだけである。現実として、人々の生活に沿っているのは土木の解釈なのだから。
私は地理学の世界では若輩中の若輩ではあるが、地理学としては本来の定義を守りつつ、他の分野では違った意味で用いられていると理解し、尊重することが必要だと提言したい。



2019年10月7日


参考文献
・三省堂(2006)『デジタル大辞林 第三版電子辞書版』
・建設省国土地理院(1985)『土地条件調査報告書(琵琶湖地区)』
・国土地理院(2000)『土地条件図「和歌山」解説面』
・国土地理院(2001)『土地条件図「岸和田」解説面』
・高槻市 都市創造部 下水河川企画課(2017)『高槻市水害・土砂災害ハザードマップ』
・粟津清蔵 監修、国澤正和、西田秀行、福山和夫 著(2018)『絵とき水理学 改定4版』
・国土交通省九州地方整備局 筑後川河川事務所 城原川の現状と課題(http://www.qsr.mlit.go.jp/chikugo/gaiyou/jobarudam/jobarudam/03damu.html)2019年10月16日閲覧
イッツコム 安心安全情報 防災インタビューVol.69 水害を防ぐために~先人の教えに目を向けて~(https://www.itscom.co.jp/safety/interview/276/)2019年10月16日閲覧
・みんなで作る土木用語辞典(https://doboku.ezwords.net/yougo/%E5%A4%A9%E4%BA%95%E5%B7%9D.html)2019年10月16日閲覧

2019年9月19日木曜日

地理情報参考サイトまとめ

自分用の地理に関するサイトやブログなどのリンクまとめをせっかくなので公開します。
目的の半分くらいは自分が出先でもアクセスできるようにしたいだけですが・・・

基本
地理院地図
https://maps.gsi.go.jp/#5/36.104611/140.084556/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

地図・空中写真閲覧サービス
https://mapps.gsi.go.jp/maplibSearch.do#1

基準点成果等閲覧サービス
https://sokuseikagis1.gsi.go.jp/top.html

ロシア版Google maps:yandex
https://yandex.com/maps/?l=sat%2Cskl&ll=159.916174%2C69.592616&z=10

古地図
今昔マップ
http://ktgis.net/kjmapw/index.html

スタンフォード大学デジタルアーカイブ
https://stanford.maps.arcgis.com/home/index.html
https://stanford.maps.arcgis.com/apps/SimpleViewer/index.html?appid=733446cc5a314ddf85c59ecc10321b41

東北大学 外邦図デジタルアーカイブ
http://chiri.es.tohoku.ac.jp/~gaihozu/

お茶の水大学 兵要地誌図
http://www.lib.ocha.ac.jp/GAIHOUZU_Web/Index.html
GIS
国土数値情報
http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/index.html

基盤地図情報
https://fgd.gsi.go.jp/download/menu.php

行政区画変遷WebGIS
http://giswin2.geo.tsukuba.ac.jp:8081/teacher/murayama/boundary/

市区町村区域のGISデータ生成ツール
http://www.tkirimura.com/mmm/

ひなたGIS
https://hgis.pref.miyazaki.lg.jp/hinata/

外邦図関連
テキサス大学 Japan City Plans U.S. Army Map Service
https://legacy.lib.utexas.edu/maps/ams/japan_city_plans/

AMS地図について国立国会図書館
https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-601033.php

台湾・北朝鮮・韓国の日本統治時代の地形図
中央研究院人社中心地理資訊科學專題研究中心
http://gissrv4.sinica.edu.tw/gis/seoul.aspx

海外

スペイン国土地理院地理院地図
http://www.ign.es/iberpix2/visor/


郷土史
尼崎市立地域研究資料館
http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/

2019年7月9日火曜日

大阪城の几号水準点

東京都内の几号水準点は現在ではかなりの知名度となっていますが東京都内以外にも几号水準点があることはあまり知られていません。

東京~塩釜間や大津~京都間にはまとまった数がありますが、大阪府内にも実はあります。

それが大阪城内の几号水準点です。


几号水準点大阪城桜門
横棒約9cm。東京の几号水準点と比べるとやや大きいです。


桜門前の橋の左側欄干にあります。
北緯34度41分5.53秒
東経135度31分32.28秒
(地理院地図で測定)


几号水準点大阪城大手門
大きさは桜門と同じです。彫癖からしても同じ測量で掘られたものと考えて構わないでしょう。柵の柱で半分隠れてしまっています。

こちらもやはり左側欄干にあります。
北緯34度41分6.20秒
東経135度31分19.40秒
(地理院地図で測定)

しかし、これらの基準点がいつ、だれの手によって刻まれたものなのかはわかっていません。
几号水準点というと基本的に内務省地理局が設置したものですが地理局が大阪で測量した記録はないようです。
また大阪城ということで陸軍の大阪砲兵工廠か第四師団に関係するものの可能性もありますが陸軍がイギリス式の几号水準点を用いた例はほかになく、これも不自然です。(陸軍はドイツ式、すなわち現在も使われている角柱型の基準点を使用)


大阪府内にある几号水準点は私が知る限りこの2つだけです。しかしよくよく探せばもっとあるかもしれません。もし何か情報がありましたらコメントにお願いします。飛んでいきます。


2019年5月27日月曜日

オーストラリアの基準点

私は2019年2月に約一周間、オーストラリアに旅行に行ってきた。その際に訪れたシドニーにて偶然に基準点を発見した。

私は元来ミリタリー趣味、特に軍艦を見るのが好きなので日本国内にはほとんどない分海外旅行の際には現地で保存されている軍艦を見るのを楽しみにしている。シドニーでもオーストラリア国立海洋博物館で保存されている駆逐艦ヴァンパイヤをいの一番に見に行ったのである。
駆逐艦ヴァンパイヤ

駆逐艦ヴァンパイヤは船内のほとんどの場所が公開されていて、自由に見ることができた。艦橋ももちろん公開されていてたのだが、私はここで発見をした。そう、シドニー近海の海図が展示してあったのである。
海図は世界中の船乗りが使うため地図記号などは世界共通規格となっている。そして、ふとシドニー中心部を見てみると、なんと三角点の地図記号が載っていた。
ハーバーブリッジの付け根のあたり。Google mapsで調べてみるとそこにはシドニー天文台があることがわかった。天文台の近くにある三角点ということは重要なものの可能性が高い。
ということで海洋博物館周辺を観光したのち見に行くことにした。

シドニー天文台。屋根の上には報時球が今も残る。なお使われているかは不明。


シドニー天文台の裏庭にて発見
このジェンガのように石を積んだものが三角点である。

側面には「Old trigonometrical survey mark」とある。意訳すると古い三角点。。軍艦の地図も最新のものではなかったため現在も用いられているかどうかは不明である。



帰国後にインターネットを用いて調べてみたところ、この基準点は天文台の屋上にある基準点の引照点のと見られるまた、ニューサウスウェールズ州の経緯度原点でもあったようだ。
あるHP曰く設置時の緯度経度は33° 50’55” S 151° 12’4” Eとある。現在の座標は33°51'34.8"S 151°12'17.0"E(Google mapsで測定)。この若干の誤差はオーストリラリア測地系と世界測地系の差なのか。


また、すぐ裏手の白いピラミッドみたいな木組みのなかには子午線標が置かれている。






小林護の発表等のまとめ

  実績 研究発表等 2018.9.22-23 日本地理学会秋季学術大会ポスター発表 「日本の大学におけ る地理教育の現状についての予察的研究」(共) CINII→ https://ci.nii.ac.jp/naid/130007539736 2019.9.21-22 日本地理学...